1.リスク管理体制
当社グループでは、経営上のリスクもしくは経営上のリスクに発展しかねない事態が発生した場合の対応と、経営上のリスクの発生を未然に防止するためリスク管理基本規程を定めております。リスク管理基本規程および関連マニュアルは、グループ・コンプライアンス・リスク管理委員会において定期的に検証・改善を行っております。
グループ・コンプライアンス・リスク管理委員会では、代表取締役CEOが委員長の任にあたり、リスク要因の早期発見・把握、リスク発生防止体制の改善、リスク発生時の対応策の策定などを定期的に行っております。
2.事業等のリスク
当社及び当社グループの事業その他に関する主なリスクは以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであり、当社及び当社グループの事業その他に関する全てのリスクを網羅したものではありません。
(1)法的規制等について
<リスク>
当社グループの主な事業、取り扱い品目は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)および関連法規等の規定により、必要な許可、登録、指定または免許を受け、販売活動を行っております。これらの規定から逸脱し監督官庁による指導・処分の対象となる事例が確認された場合や、許認可の状況により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
なお、2022年3月に当社連結子会社である東邦薬品株式会社が、独立行政法人地域医療機能推進機構を発注者とする医療用医薬品の入札に関する独占禁止法違反で、また、2023年3月には、連結子会社である九州東邦株式会社が、独立行政法人国立病院機構本部を発注者とする「九州エリア」に所在する病院が調達する医療用医薬品の入札に関する独占禁止法違反で、それぞれ排除措置命令及び課徴金納付命令を受けました。本案件にともない発生する可能性がある違約金等について、その金額を見積もり、独占禁止法関連損失として引き当てております。
調剤薬局事業の運営においても、医薬品医療機器等法や健康保険法等の法的規制によって、遵守事項が厳格に定められており、関連する法令に違反した場合、 またはこれらの法令が改正された場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
<対応>
当社グループでは、事業運営にあたり関係する各種法令の遵守をめざし、役職員が遵守すべき規範として倫理綱領を制定しております。同倫理綱領では、独占禁止法および医薬品医療機器等法を遵守すべき重要関連法規と位置づけ、全従業員に規範の実践を周知徹底しております。また、全従業員に対し独占禁止法をはじめとする重要関連法規遵守のためのコンプライアンス研修を実施するとともに、医薬品医療機器等法などの理解が特に必要とされる職務に従事する役職員には、その分野の専門研修の受講を義務付けるなど、コンプライアンスの徹底に努めております。
(2)薬価基準改定および医療保険制度改革の影響について
<リスク>
当社グループの主要取扱商品である医療用医薬品は、薬価基準に収載されております。薬価基準は医療保険で使用できる医薬品の範囲と医療機関が使用した医薬品等の請求価格を定めたものであり、販売価格の上限として機能しております。
この薬価基準については、厚生労働省が市場における医療用医薬品の実勢価格調査(以下「薬価調査」といいます。)を行い、その結果を薬価基準に反映させるために2年毎に改定が行われております。また、2018年4月の薬価制度の抜本改革により2021年4月より中間年における薬価調査・薬価改定が導入されております。今後の薬価基準改定および医療保険制度の改正の内容によっては売上への影響に加え、医療機関への納入価格やメーカーの仕切価格や割戻金、販売報奨金にも影響し、その結果、利益にも影響を与えるなど、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
<対応>
市場拡大が見込まれるスペシャリティ製品の取り扱いを拡大するとともに、成長が期待できる医療関連領域・製品への積極的な投資による新たな事業の構築に努めております。また、医療機関に対しては製品価値と流通コストに見合った価格提示を行うことで適正利益の確保に努めております。
(3) 特有の商慣習について
<リスク>
当社グループが主に事業展開する医療用医薬品卸売業界においては、医薬品が生命関連商品であり納入停滞が許されないという性質上、医薬品を価格未決定のまま医療機関・調剤薬局に納入し、その後に価格交渉を始めるという特異な取引形態が旧来より続いております。官民挙げてかかる流通慣行の改善に継続して取り組んでいるところではありますが、当社グループでは交渉が難航した場合に合理的な見積もりにより決定予想価格を算出して売上計上しております。価格交渉に長時間を要する場合や当初予想と異なる価格での決定となる場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
<対応>
当社では、製品価値に応じて単品ごとに価格設定を行い、設定した価格を下回る場合は本社のみに承認権限を付与する価格ロックシステムを運用することで、適正な価格での販売に努めております。
(4)販売情報提供活動ガイドラインについて
<リスク>
2019年4月1日より、不適切な販売情報提供活動を規制する「医療用医薬品の販売情報提供活動ガイドライン」が運用されております。当ガイドラインに違反するような行為が行われた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
<対応>
当社グループでは監督部門として東邦薬品株式会社をはじめとする医薬品卸事業子会社に当ガイドライン遵守を管理監督する専門部署を設置し、活動を適切に行うための各種マニュアルの整備や、営業担当者の業務記録の作成・保管等の指導にあたるなど、ガイドラインの遵守に努めております。
(5)調剤薬局事業について
<リスク>
医療用医薬品の性格上調剤過誤が生じた場合、人体に損害を生じさせる可能性があります。人的過失等の事由により調剤過誤が発生したときは、多額の賠償金の請求を受けるだけではなく、既存顧客の信用および社会的信用の低下を招くおそれがあります。この場合、その内容によっては当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、厚生労働省令によって薬局の薬剤師配置に人数が厳しく規制されており、薬剤師の必要人数が確保されない場合には当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
さらに調剤薬局事業は、薬価基準に基づく医療用医薬品販売収入ならびに健康保険法に定められた調剤報酬点数に基づく調剤料および薬学管理料等が主要な収入となります。したがって、薬価改定や調剤報酬改定の内容や医療保険制度改革による制度改正の内容によっては当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
<対応>
当グループの薬局では社員教育の他、調剤過誤防止機器の導入を積極的に行い安全性の向上に努めております。また、調剤事故に対する保険に加入することで、万が一の事故発生時の補償体制も整えております。人員配置については店舗特性に応じた最適人員数を規定し、人員の増減をリアルタイムに把握することで速やかに調整や採用ができる体制を整えております。また、年間の退職・休職のトレンド数、出店計画等を踏まえた新卒採用を行っております。薬価改定・調剤報酬改定については、これまでの改定トレンド、医療保険財政の状況等より増減が想定される項目について情報収集を行い、速やかに対応を進める体制を整備しております。
(6)医薬品製造販売事業について
<リスク>
医薬品製造販売事業ではジェネリック医薬品の製造および販売ならびに注射用医薬品の受託製造を行っています。予期せぬ副作用の発生や調達・製造プロセスにおいて品質や安全性の問題が生じたことより、製品回収や販売中止、製造中止等の事態となった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、製造または原材料の調達・製造プロセスにおいて、災害・流行性疾病等の発生により停滞・遅延が発生した場合にはその影響を受ける可能性があります。
<対応>
当社の医薬品製造販売事業子会社である共創未来ファーマ株式会社では、調達する原料・資材から製造の各工程、出荷に至る過程において、GMP省令(「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」)およびGQP省令(「医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理に関する省令」ならびにGVP省令(「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」)、その他関連する法令に則り、製造管理および品質管理ならびに安全性確保に努めております。また、BCP(事業継続計画書)の策定により災害・流行性疾病等が発生した際の影響を最小限に抑えるよう取り組んでおります。
(7)減損損失について
<リスク>
固定資産の減損会計は、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とすることとされております。このため、保有する固定資産の収益性の低下や市場価値が著しく下落したなどの場合には、固定資産の減損会計の適用により特別損失の計上が必要となり、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
また、市場価格のない投資有価証券は、1株当たり純資産額と取得価額とを比較して1株当たり純資産額が50%を下回り、合理的期間内に取得価額まで回復可能性があると判断できない場合には、当該減少額を投資有価証券評価損等として当期の損失とすることとされております。なお、将来の超過収益力等を反映した価額を実質価額とすることが合理的と判断される場合には、当該金額を純資産額に代えて減損処理の要否を検討しております。このため、市場環境や商品・製品開発の状況、競合他社の状況の変化等により、保有する株式発行会社の事業計画等が達成されず、1株当たり純資産額または実質価額の回復可能性が見込まれないと判断された場合は、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
<対応>
設備投資に際しては、投資によって得られる収益、発生するコストなど投資回収の採算性を十分に検討し、投資の意思決定を行うことでリスクを低減するように努めております。
また、設備投資後は、業績進捗について定期的にモニタリングしております。
株式をはじめとする投資有価証券などへの出資に際しては、出資先の財政状態、事業計画の実現可能性、投資リターン等を調査、分析し、投資委員会等で十分な検討の上で出資の意思決定を行うことでリスクを低減するように努めております。
さらに、出資後は、出資先の財政状態、事業計画の進捗を定期的にモニタリングしております。
(8)債権管理について
<リスク>
取引先や顧客に対する債権については、回収不能見込額を見積もり貸倒引当金として計上しておりますが、取引先や顧客の経営状況の悪化や経営破綻等により、予想を上回る回収不能が発生した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
<対応>
当社グループでは、与信情報等を参考に、営業現場からの定性的情報も加味することで、顧客の与信リスクを定期的に見直すなど、与信管理体制の強化と債権保全の徹底に努めております。
(9)システムトラブルについて
<リスク>
当社グループは、その事業運営をコンピュータシステムおよびそのネットワークに依拠しております。したがって、大規模なシステムトラブルや、外部からの予期せぬ不正アクセス等によるシステム障害が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
<対応>
上記の事態に備えるため、当社グループでは基幹システムおよび周辺システムの完全二重化によるバックアップ体制を構築しております。外部からの不正アクセス等については、グループの外部との接続口を集約し、その監視と対処を外部専門ベンダーに委託しております。サイバーセキュリティ対策については、定期的に外部ITベンダーのネットワークとアプリケーションの脆弱性診断を受け、指摘された問題に対して適時改善を図っております。
(10)自然災害・パンデミックについて
<リスク>
想定外の大規模災害やパンデミックが発生し、事業所や物流センター、店舗の閉鎖など、事業活動に支障をきたした場合、売上高の低下や、復旧にともなう期間や費用の状況によって、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症については、感染症法上の位置付けが、「5類感染症」に移行されたものの、感染拡大の状況によっては感染リスクを警戒した患者の受診抑制による処方箋枚数の減少や、販売・物流機能への影響など、当社グループの営業活動や業績に影響を与える可能性があります。
<対応>
当社グループは、自然災害やパンデミック等に備え、危機管理体制の構築や基幹システムおよび周辺システムの完全二重化、物流センターの自動化、自家発電機の設置、定期的な訓練等を実施しております。また、自然災害におけるリスクをエリアごとに明確化し、課題と対策をまとめた災害対策計画書を策定しております。
(11)情報の管理について
<リスク>
当社グループは特別な配慮を要する機微な情報を含む医療従事者や患者などの個人情報や、様々な経営情報等の内部情報を多数取り扱っております。これらの情報については、情報セキュリティマネジメント体制を構築し、厳重な管理を行っておりますが、その取り扱いに不備があった場合や、サイバー攻撃等の不測の事態により漏洩が生じた場合、重大な社会的信頼の低下や賠償責任が生じる可能性があります。
<対応>
当社グループは、情報セキュリティ基本規程を定め、情報セキュリティマネジメントの確立と、情報資産の適切な管理に努めております。また、情報セキュリティマネジメントの企画および計画立案、ならびにその遂行と、リスクアセスメント、リスクマネジメントの実施、および従業員への普及・啓発を行う組織として、情報セキュリティ委員会を設置しております。
また、個人情報保護の重要性に鑑み、「個人情報保護法」およびその他の法令を遵守し、当社が定める倫理綱領および個人情報取扱規程にもとづいて、個人データの管理体制を確立し、その保護に努めております。